シュタイナー学園13期卒業生
清水隆陽路さん後編

「シュタイナー教育」と聞いて思い浮かぶのはなんでしょうか?
メディアを避ける教育、テストや点数による評価のない教育、自然に親しみなんとなく自由そうな教育…。漠然と浮かぶのはそんなイメージでしょうか。
シュタイナー学園は長い時間をかけて築き上げられたシュタイナー教育独自のカリキュラムに沿い「芸術としての教育」「自由への教育」を行う小学校から高校までの12年間の一貫教育です。
いわゆる「普通」とは違うこともありますが、何より大事にされていること。それは子どもが子どもらしく育つということではないかと思います。一人一人の子どもが、その子らしく、その子に沿った成長をしていくのを手助けし見守る。それがシュタイナー教育のおおきな特徴でもあると思います。そんな意味では、一人一人の成長、一人一人の人生こそが「シュタイナー教育らしさ」なのではないかとも思います。
シュタイナー教育を受けた子どもたちは何を感じ、何を考え、現在一人の大人としてどのように社会と関わり、人生を歩んでいるのでしょうか?この連載では卒業生たちのインタビューを通して多彩な一人一人の物語の一端を、お伝えできたらと思います。
清水隆陽路
保育士/シュタイナー学園13期卒業。玉成保育専門学校卒業後、保育士として働くかたわら、オイリュトミストを目指し、天使館オイリュトミーシューレに通い修業中。

保育士として忙しい日々を過ごす清水隆陽路さんのインタビュー後編をお伝えします。

前編では子ども時代の思い出と、子ども好きの清水さんがシュタイナー学園で影響を受けて保育士の道を選んだことについて伺いました。後編では、週5日学んでいるオイリュトミーについての魅力をと、シュタイナー学園卒業生の魅力を伺います。

 

 

 

笠井叡先生のオイリュトミー公演を見て、こんなオイリュトミーもあるんだなということを知って衝撃を受けました。

●いま、保育とオイリュトミーの活動を両立しているそうですね?

「平日は保育の仕事を早番で終えた後、国分寺にある天使館というオイリュトミー学校で笠井先生からオイリュトミーを学んでいます。朝7時から仕事をして夜遅くまでオイリュトミーを学んでいるので平日はそれだけで終わってしまいますが、とても充実した日々です。これからもバイト感覚で保育の仕事をするのではなく、オイリュトミーの活動だけで暮らすのでもありません。保育の仕事もオイリュトミーも、どちらも同じくらい大切にしたいという気持ちがあります。」

 

  • 卒業後もオイリュトミーを学ぼうと思ったきっかけは?

「1年生の時からオイリュトミーを毎週専科で学んできました。でも、思春期には、私もほかの子と同じようにオイリュトミーを真面目に受けようという態度がなくなっていたのです。オイリュトミーに関心を持ったきっかけは、11年生の時に親に連れられて笠井叡先生の公演を見に行ったときです。笠井叡先生のオイリュトミーは迫力があって力強い舞台で、衝撃を受けました。

学園でのオイリュトミーは綺麗で優しいイメージのものが多かったんですが、笠井先生の動きを見て、こんなオイリュトミーもあるんだなと衝撃を受けました。オイリュトミーはこういう感じにもできるのだと、幅の広さを知りました。もっとオイリュトミーを知ってみたいと思って、学園のオイリュトミストである秦先生に見てもらいながら、卒業プロジェクトにはオイリュトミーを選びました。教育のオイリュトミーや治療オイリュトミーなどもありますが、私はオイリュトミーがただ単に好きで動きたいという気持ちがあります。」

 

  • 小さい頃からオイリュトミーを学ぶと、どんな影響があると思いますか?

「健康にいいとか、そういうことはよくわかりませんが、オイリュトミーをやっている意味の一つとして、体のバランスを整えるということがあると思います。私が働いている保育園でもオイリュトミーの先生が来て園児に教えていますが、静かに体に向かうという時間は、日常あまりない空間だから、子どもの様子がいつもと違います。一回体を鎮められる瞬間、というのでしょうか。漠然と動いてはいるけど、普段意識しないで使っている身体を意識して動かす瞬間というのは、自分を知る空間なのではないでしょうか。普段保育園はわさわさしているから、体を意識して動かす瞬間、自分を知る空間を作ることができるオイリュトミーは必要なのでは、と感じています。」

 

  • どんなオイリュトミーを目指していますか?

「オイリュトミーは幅広いですよね。入口が様々で、そこから深まっていきます。オイリュトミーは先生によって全然違いますが、私は笠井先生から学びたいと思ったのです。オイリュトミーの学校では、4年間芸術のオイリュトミーを表現してからハイルオイリュトミーという治療オイリュトミーや、教育としてのオイリュトミーを学んでいきます。保育の仕事にオイリュトミーを取り入れるということもあるかとは思いますが、私はひたすら表現としてのオイリュトミーをして、作品を作ったり公演などの活動をしていきたいと思っています。」

 

物知りだと言われますが、私はみんなが知らないことや違うことを知っているだけなのです。

  • 社会に出てみて、シュタイナー教育を受けている人と一般の人の違いはなんだと思いますか?

「保育の学校では、シュタイナー学園の友達と比べて、話す内容がこんなに違うのかと思いました。テレビや音楽の話はよくわからなくて、マイナーな映画や演劇、オイリュトミーの話をすると、物知りだねと言われたんです。でも、私はみんなが知らないことや違うことを知っているだけなのです。みんなが話していることは共通の話題が多くて、でもその世界だけではないんだけどなぁと漠然と思っていました。みんなと一緒の話題ができるのは確かにいいと思いますが、それが本当にいいことなのか、自分が楽しいと思えるかというのは別問題です。シュタイナー学園の同級生や下級生と話をすると、芸術にたけた映画を作る人がいないという議論になったりします。そこまで深く話せる人は、シュタイナー学園出身の人以外にはいない気がします。シュタイナー学園の卒業生は、やりたいことのために頑張っている人が多いと思います。普通にOLをやっているとしても、それはちゃんと自分のやりたいことだったりします。」

人をうらやむ気持ちはあまりなく、自分の能力として、もっといろいろなことができたら嬉しいとは思います。

 

  • 他の人を見ていて、うらやましいとか、ねたましいとかいう思うことはありますか?

「褒められて嬉しいという気持ちはありますが、もっと上のポストに上がりたいという出世欲のようなものはないですね。自分の能力として、もっといろいろなことができたら嬉しいとは思います。私より年収がいい人がいるとしても、その人と同じことを自分がやりたいわけではないから、あまりうらやましいとは思いません。うらやましいとか、ねたましいとかいう価値観はないですね。どちらかというとマイナス思考な方だとは思いますが、最後には、大丈夫でしょうと思えるんです。これは、手を動かして学んできた、シュタイナー学園の出身者に共通する価値観かもしれませんね。」

 

揺るぎない視点で自身の保育という仕事とオイリュトミーの活動を大切に生活されている清水隆陽路さん。シュタイナー学園で子どもとのふれあいを心地よく感じ、教育として受けていたオイリュトミーの新しい可能性に気がつく。自分がやりたいと決めた2つの道をまっすぐに進んでいく隆陽路さんのこれからの活動が楽しみです。

隆陽路さん、ありがとうございました。

この連載はリレー形式で続いて行きます。

次回は隆陽路さんよりご紹介いただいた佐山尚さんにご登場いただきます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ライター 越野美樹

他の記事をよむ