学園8年生、6年生、2年生保護者 
高橋靖典さん・紫乃さんご夫妻

藤野のシュタイナー学園は都心から少し離れた山間の小さな町の中にあります。
自然豊かで四季の移ろいを感じられる素晴らしい環境の中、子どもたちがのびのびと過ごせるという大きな魅力がある一方、家族の暮らす場所や生活スタイルにも時に変化を要するという現実も、またあります。
仕事に通えるのか?買い物はどうするのか?田舎暮らしなんて想像できない...。学園への入学を考える保護者の方からはそんな声も寄せられています。
このインタビューでは学園にお子さんを通わせている保護者の方々のお話を通して、実はシュタイナー教育と同じくらい魅力的な「藤野」という場所と、暮らしの中で得たこと、変化したこと...様々な家族の暮らしをご紹介していきたいと思います。

高橋靖典さん・紫乃さんご夫妻は学園から車で15分ほどの牧野という地区の大きな古民家で、学園に通う3人の娘さんと暮らしています。靖典さんは地域通貨や地域電力の活動にも深く関わりながら学園の理事長も務め、紫乃さんは地域に根ざした花や俳句の活動をしている藤野を語る上で欠かせないご夫婦。ですが、もともと都会育ちで初めての子育ては渋谷でスタートしたというお二人。そんなお二人がシュタイナー教育に出会い、藤野への移住を決めるまで、そして移住後の生活について前編、後編で伺います。

都会は小さい子が周りに気を使わないでのびのび遊べる場所が本当に限られているなあと感じました

もともとは渋谷にお住まいだったそうですね

靖典さん「当時勤めていた会社が六本木にあり、結婚当初は麻布十番に住んでいました。子どもが生まれることになって、少しは緑のある場所にと思い、渋谷区の代々木公園の近くに引っ越したんです。でも暮らしてみると実際はなかなか厳しい部分もあったんですよね」

紫乃さん「週末に公園に行くと人がすごく沢山居て。明治神宮側は人は少ないけど芝生のある場所は境内なので、ボール遊びなどは出来ないんです。都会は小さい子が周りに気を使わないでのびのび遊べる場所が本当に限られているなあと感じました」

靖典さん「当時勤めていた会社が、子どものために会社を休むことなどは推奨されない文化の会社で、二人目が産まれる頃には、暮らしの軸を家族に置きたいと考えていました。そんな時に、シュタイナー教育を知ったんですね。最初の話は、小学校に入学した時に周りの子と同じように行進ができない子たちがいる、その子たちはシュタイナー幼稚園出身の子どもらしいと。僕は行進が苦手な子どもだったので(笑)。入り口はそんなところだったんですが、興味を持ったんですよね」

起業とシュタイナーとの関わりが微妙にリンクしていました

靖典さん「その後、二人目の娘が産まれたことと、起業への想定もあって、川崎の紫乃の実家にしばらく同居することを選びました。そうしたら、そこから車で15分くらいのところに、横浜の青葉シュタイナーこどもの家があったんです」

紫乃さん「青葉シュタイナーこどもの家の土曜クラスに長女を連れて行ってみたのが2007年の秋くらい。そこから通いだしてみたら、先生のすばらしさに本当に感動して。親以上に子どもをわかってくれていると感じることが何度もありました」

靖典さん「長女は横浜の幼稚園に3年通いました。その間はずっと僕は仕事と家族のバランスで迷い続けて。テレビ番組の企画やインターネットの新規事業を手がけるテレビ局関連の会社に勤めていたのですが、夜も遅くなる仕事だったので、子どもとの時間を持てる働き方をしたいという気持ちがより強くなりました。でもなかなか踏み切れず…」

紫乃さん「夫の起業とシュタイナーとの関わりが微妙にリンクしていて。小学校は、どこかのシュタイナー学校に行かせると決めて、夫は起業したんです。わたしもなんとかなるよ!稼ぎが悪くなったら、わたしが働くからいいよ!って言って後押ししました(笑)」

シュタイナー幼稚園からシュタイナー学校に行かせることに迷いはなかったのでしょうか?

紫乃さん「シュタイナー学校に行くと純粋培養で社会適応できないのでは?という意見を聞く事もありました。でも、幼稚園に通わせて感じたシュタイナー教育の良さ。たとえばメディアとの付き合いかたや生活リズムっていう一見大変そうに見えがちな部分にも一つ一つ理由があって、その理由は知れば知るほど納得することばかりでした。そう感じ築いてきたことも公立の学校に行くと私自身が流されてしまうのが目に見えていて、それは嫌だなという思いがありました。そんな思いがある中で、小学校の授業を体験できる出張講座というものに行ってみました。今学園にいらっしゃる大嶋先生の授業だったのですが、幼稚園の先生に続き、やっぱりシュタイナー教育の先生のすばらしさを感じ、こんな先生がいる学校に娘を預けたいと思いました」

靖典さん「学校を選ぶにあたって、起業後の仕事のことを考えると都内に通える距離が望ましい、でも自然が豊かな環境もいいなあと、いくつか候補にあがっていたシュタイナー学校の中から藤野の学園も見学に行きました」

印象はどうだったのでしょうか?

靖典さん「最初に行ったときは、校内に子どもがいない日で。しかも雨の日で雰囲気もどんよりとしてて。正直ポジティブな印象は持てなかったんです。でも、その後オープンデーに来たり、藤野に遊びにきたりしているうちに印象がどんどん変化していきました」

都会の子育ての難しさ、仕事と家庭のバランス、現在多くのご家族が抱えているだろう悩みに一つ一つ向き合い、変えていこうとされた高橋さんご夫婦。後編では変わっていったという藤野の印象と実際の暮らし、そして学園に通いだした子どもたちの様子について伺いたいと思います。

 

ライター 中村暁野

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